決算説明その２　払ってください

「先生、ほんまに儲かってたら税金ぐらい何ぼでも払いますがな。」

「今年度は２０００万円の利益です。それから法人税、法人市民税、法人府民税、法人事業税、
消費税、地方消費税、事業所税ついでに固定資産税の合計が約２０００万円です。」

「そんなアホな！儲けたのになんでお金が残りませんねん？」

「消費税と事業所税と固定資産税ですがな。これは儲けたから払わんとあかんのと違いますで。
　儲けに対してはだいたい１２００万円くらいですわ。」

「そやけど会社の通帳見て−な。どこにそんな金が残っていますねん？」

「それは前からこれ位の税金払うことになりまっせ、て言っているのに使うからですわ。」

「そやけど、その儲けた２０００万円どこにもありませんで。どういうことですねん？」

「このメモを見てください。去年の決算から今年の決算までに借金が１０００万円ほど減って
　います。それと営業に行くのに使うということでバイクをやめて中古のベンツとポルシェを
　買いましたやろ。最新鋭のドイツの機械が欲しいと言って高い機械を買いましたでしょう。
　その機械に合う注文が全く来ないそうですけど。それに交際費の加算が８００万円ほどあり
　ます。北新地のクラブにゴルフとかで、税法の限度をはるかにオーバーしています。」

「ほんまに数字はうそつかんなー。うまいことバランスが合ってるなー。」

「感心しいてる場合やおまへんで。納付期限は来月の末ですよ。」

「悪いけど、嫁さんの機嫌のエエ時に今の説明もう一度してんか。嫁さんのおやじさんがお金
　の使い道に困るくらい持っているらしいから、頼むわ。」

「そのままこの説明でよろしいか？」

「もちろんそれでエエガナ。いや、ちょっと待って。北新地の件はなかったことにしといてんか。」

「お金がいるんですからカローラと競争して負けるようなポルシェなんかもう売ってしもたらど
　うですか。」

「なんでそのこと知っているの？」

「社員の人みんな知ってはりますで。名神高速道路で勝負をかけたのに、負けてしもてえらい落
　ち込んでしまいはったそうで。昼寝の時に寝言で『カローラに負けてもた！』って、怒鳴って
　はったそうですな。」

「なんや、ばれてるの。そやけどその件は、うちの会社の業務秘密やから、よそで喋らんといて
　や。そやけど何でベンツの方は、売れって言わへんのや。」

「あれは奥さん専用車ですから。無理です。誰も怖くていえません。」

「先生から嫁さんに、売ってしまえって、アドバイスしたってーな。」

「そんな恐いこと、いやです。自分に都合の悪いことを言われると、奥さんはすぐウソ鳴きして
　人を困らせはりますから。私では太刀打ちできません。」

「先生も男のくせに根性ないなー。」

「まあ、社長とどっこいどっこいですわ。とにかく期限までに、税金は払ってくださいよ。」