経理部長へのアドバイス　その１　　　　　　　　　　　　Ｈ１４．５．１

　
グルメでかつグルマンとの噂がある仕事先の経理部長さんから「会社の近所におしゃれなフランス料理屋さんができたんで、一緒に昼ご飯食べながら打ち合わせをしましょう。」と言う電話が入ってきました。もちろん私が断るはずもなく、イソイソと大雨が降っている日に出かけました。レストランに入っても部長は何も注文をしません。しかし、かぼちゃのスープが馬鹿でかい皿に少しだけの量で、すぐに出てきました。

前もってメニューを予約してくれていたのでしょうか？

　　　　　　

部長　「先生が一年前に言われたとおりになりましたわー。今度の決算、えらい赤字ですわ。先生の予測は、いつもハズレでしたから今度もハズレと期待してたんですけど。えらい大赤字ですわ。」

槇　　「インデアンと税理士は、うそを言いません。私の予測で今まで外れたことがありましたか？」

部長　「社長が、先生が株を買ったと聞いたら直ぐにその株に空売りをかけたら儲かるて言っていたのを聞いていたもんですから。」

槇　　「部長、長生きしたかったら、私の前で株の話は止めといてください。塩漬けにした株を思い出しただけでも私、凶暴になりますよってに！」

部長　「ほんまに、こめかみに青筋が立ってきましたで。えらい、すみません。」

槇　　「私の本職の会計、税金の話で今日はお伺いしてますから、来月の決算の話をしましょう。」

部長　「それそれ、その件ですわ。社長が世間に顔向けができんから、このごっつい赤字の決算をなんとか黒字にしろ、て言うんですわ。」

槇　　「そら無理やわ。一年前から私が大赤字になるて言ってましたやろ。」

部長　「社長は、先生に言うと予測が当たったと言われるのがしゃくやから、経営コンサルタントに頼め！って言うんですわ。むちゃくちゃですやろ。そんな都合のエエ経営コンサルタントなんていませんよねー。」

槇　　「居られますよ。私はまだお会いしたことがありませんけど。」

部長　「エエー、そんな人居られますか？助かりますわー。ぜひ教えてください。早めに先生に相談してよかったですわ。イヤー、ほんまに助かりますわ。」

槇　　「そんなに喜んでもらうと恐縮しますけど、お名前が、名の通った方でマリックさんと言われる人ですけど。」

部長　「いやー、外人さんですか。困りましたなー。当社で英語のできる者は、営業の田村君だけですけど、彼は間違いなく秘密を守れない男ですわ。歩く伝言板て言われてる男ですから、決算の話の通訳はちょっと問題があるんです。どうしましょうか？」

槇　　「いえいえ、その人は日本語をしゃべりますよ。ご存じないですか？かなり有名な人ですよ。テレビにもよく出ておられる、ほら、あのミスター・マリックさん。子供に人気抜群の人ですけど。」

部長　「そんなアホな。知ってますけど、その人は奇術師ですがな。」

槇　　「違います。超魔術師と言ってください。」

部長　「どっちでもよろしいがな。なんで会社の決算の話にミスター・マリックさんが出てきますんや。」

槇　　「社長の要求は、半分口の中に入った焼き鳥を元のニワトリに戻してくれって言っているようなもんですわ。私には、マリックさんが最適やと思いますけど。」

部長　「そんな話をしたら、かしわにしたるって社長に首絞められますわ。」

槇　　「一回、絞められたらどうですか。気を失う寸前が気持ちエエって言う人がいるそうですがな。」

部長　「そしたら、先生から先に絞めてもらってください。」

槇　　「私は、嫁さんにいつも絞められて十分味わっていますから結構です。」

部長　「あーあ、赤字決算のこと考えてたら、食事がのどを通らんようになってきましたわ。せっかくの料理を残しそうですわ。」

槇　　「昼の定食は、あとコーヒーが出てきたらもう終わりですよ。部長の皿にはパセリも残ってませんけど。」

部長　「あっ、そうですか。きれいに食べてしもてましたか。ダイエットすること忘れてましたわ。まあ、決算のこと考えるのは来月にしますわ。」

槇　　「早めに考えても結果は同じやから、それでエエと思います、ハイ。」

　　　　　　　　　　　　　　　　

ご馳走になったフランス料理店の昼のメニューは、白板に書かれた定食だけで、それも一種類しかありません。ですから、テーブルの前に座るとすぐに水とスープが出てきます。早く食事にありつけて嬉しいのですが、選択する自由、あれこれ迷う楽しみ、一切ありません。しかし、決算の相談も「朝飯前」ではなく「昼飯中」でしたが簡単に結論が出た？ことも手伝って、私には十分おいしい料理でした。